幸せになる為には、自覚的に生きている人をより多く知るという事が重要になってきます。
このシリーズでは、そのような自覚的に生きている人たちをご紹介します。
今回は、長い間 紆余曲折を経てきて、最近やっと自分の活路を見出しつつあるような人物を紹介したいと思います。
というのは、誰もが認めるような華々しい成功者の話というのは、あまり参考にはならない事が分かってきたからです。
それよりも人の失敗を見て反面教師にする方が、自分では認めたくないような事実にも目を向けやすくなるような気がします。
今回ご紹介するのは、漫画家の山田玲司(やまだ・れいじ)さんです。
いきなり“失敗してきた人”として紹介するのも ずいぶん失礼だと思われるかもしれませんが、山田さんの人生からは何かと学ぶ事が多かったので、特に創作についての悩みを抱えている人には知ってもらいたいような人物です。
私が山田さんを知ったのは、Youtubeで「山田玲司のヤングサンデー」という番組を知り合いに紹介してもらったのがキッカケです。
つまり山田さんは、今では漫画家としてよりもニコ動の生主とかユーチューバーとしての知名度が上がってきている所なのです。
山田さんは、長いあいだ漫画家として成功する事が出来なかった理由をようやく認める事で、新たな道を模索し始めているようです。
師匠の言う事はアテにならない?
山田さんは、子供の頃に手塚治虫が書いた「漫画の描き方」という本を読んで感銘を受け、13歳には編集社に持ち込みを開始したそうです。
そして大学時代にデビューを果たしてからずっと、多分現在は50代くらいだと思いますが、ずっと現役の漫画家として生きてきました。
ただ商業的な成功とは無縁らしく、時々報われない努力に対する苦悩について動画でも語っています。
そして山田さん自身が最近認めつつある失敗の中で、一番大きかった点は「他の漫画を一切読まなかった」という事でした。
これは手塚治虫さんの影響なのですが、手塚さんが著書の中で“自分は他の漫画を読まず、映画からアイデアを得ていた”というような事を言っており、山田さんさんはそのアドヴァイスを愚直に守ったのでした。
ところが後年、手塚さんは他の売れっ子漫画家の作品も思いっきり読んでいたし、“売れている要素”と思われる点は積極的に取り入れていた事が分かってきました。
漫画の神様のアドヴァイスは役に立たなかったどころか、逆に足を引っ張っていたようです。
漫画というものがわかっていない漫画家
次に山田さんが身に沁みて感じている失敗として、漫画は「ストーリーが面白ければ絵が上手い必要はない」という思い込みがありました。
つまり山田さんは絵が得意ではないし、絵に重きを置いていなかったのです。
確かに、絵が上手ではない漫画でも大ブレイクしている作品はありますよね。
例えば、カイジの作者である福本伸行さんは“女性”が描けないという話を聞いた事があります。
でも彼の場合、ギャンブルの世界を描くのが得意なので、女性を描く必要性は無いわけです(笑)
ところが、山田さんの得意分野は恋愛モノのようです。
恋愛漫画で、可愛い女の子が描けないというのは致命的な気がします。
山田さんの失敗とは、読者の反応よりも“漫画の神様”の言葉に耳を傾けてしまった事なのかもしれません。
今では絵の重要性を認め、作画を別の人に担当させたりしているようです。
ゲストが話を聞く番組
山田さんは動画の中で「自ら売れないように、売れないように行動してきた気がする」と言っていた事があります。
番組では漫画やアニメの解説をしているのですが、今までの反省を踏まえて自分の興味は置いておき「売れている作品」をチョイスしています。
私は山田さんの漫画は読んだ事がありませんが、彼の解説の面白さはピカイチだと思います。
でもそれは彼いわく、しょっちゅう深夜のファミレスで仲間とダベっていたような話を動画にしているだけなんだそうです。
ところがそれは、やはり日夜“創作の苦しみ”を味わっている人間だからこそできる評論であって、その洞察の深さには驚くばかりです。
聞き手も何人か出演してはいますが、ほとんど一人で何時間も喋りまくるという饒舌振りで、ゲストを呼んでもゲストが聞き手になってしまうというのがこの番組の特徴だったりします。
彼の番組は一定数の層に人気があり、それは たとえ売れなくてもずっと漫画家として生きてきた経験が、並の評論家には真似の出来ない“尖った解説”として評価されているのだと思います。
まとめ
大きな功績を成した人に成功の秘訣を聞いてみても「そりゃもっともだ」というような正論を言われて、何だか期待はずれに終わってしまう事って、よくあると思います。
でも最近では、凡人がなかなか目的を達成できないのは、成功法則を知らないからではないような気がする事が多くなってきました。
むしろ、間違った認識や思い込みによる障害による事が多いのかもしれません。
そういう意味では、自分の失敗を惜しみなくさらけ出してくれる人というのは貴重な存在だと思います。