幸せになる為には、自覚的に生きている人をより多く知るという事が重要になってきます。

このシリーズでは、そのような自覚的に生きている人たちをご紹介します。


私も常々思っていたのですが、学生の頃って生活費にひと月いくらかかるのか?という生活コストというものを学ぶ機会って無いんですよね。

殆どの人が、社会に出たり結婚して親元を離れるまで、知らないまま突っ走ってしまうのではないでしょうか?

そこを知らずして進路を決めたり、そもそも収入の話を抜きにして職業を考えるというのは本当に健全だろうか?と三田さんはツッコミを入れています。

そもそも進路を決めるときに「ものさし」が無くて、どうやって決めろというのでしょうか。

「ものさし」は、何も金銭とは限りませんが、ただ一番切実で現実的な問題なので取り上げているのです。

他に重要な尺度がある人はそれで良いのですが、ただ「ものさし」というのは”言語化”できるものでなくてはなりません。

一番怖いのは「なんとなく」とか「皆がやっているから」みたいなノリで、そこには確かなものは一つもありません。

皆一緒に転落してしまう可能性も十分ありえるのです。

悩んでもしょうが無い事で悩んでる?

今回は漫画「ドラゴン桜」で有名な三田紀房(みた・のりふさ)さんが、中高生の進路について語っていた動画が面白かったので紹介したいと思います。

まず三田さんは、とても肩の力が抜けているというのが印象的でした。

東大に入学するという目的に絞り込み、最短距離を編み出して成功させるという楽しい漫画を世に送り出した人なので、どんな尖ったノウハウが聞けるのかと、何となく期待してしまいます・・・。

ところが その軽い口調とは裏腹に、その思考の深さが垣間見えて、やっぱりノウハウありきでは無いと思い知らされました。

学生の進学先や就職先への選択について、三田さんとしては「間違いのない選択なんて目指さなくて良いんじゃね?」というスタンスでした。

中高生に自分で進路を決めろというのが、そもそも酷なのだと言います。

確かに学生の頃って、社会を知る機会など殆ど与えられていませんよね。

社会には何千何万という職業が存在しますが、実際に学生が知る事の出来る職業というのはほんの僅かです。

自分の家族や親戚、テレビや雑誌から得られる情報など、情報源は限られています。

そんな限られた情報しか与えられない中で、自分の進路を決めなければならないとなると、どうしても偏った選択肢にならざるを得ないという訳です。

今はインターネットがあるので、昔よりは情報の幅が広くなっているのでは?と思う人もいるかもしれませんね。

ただ いくらインターネットがあっても、情報リテラシーが高い人というのは少数派だと思います。

むしろ、うまく活用できる人と出来ない人との差が大きく開いて、取り残された方はますます苦しくなっているような気もします。

日本の解答至上主義的な学習習慣の影響で、ベストな答を求めすぎる事が進路の悩みを生んでいるのかもしれません。

「ちょっと先」までしか見えない

それでは、情報を賢く入手できない人の将来は暗いのか?というと、三田さん的には全くそうではないようです。

そこは、ご自身の事を例に挙げて教えてくれます。

三田さんは最初から漫画家を目指していたのか?というと、全くそうでは無かったそうです。

彼の両親は、自営業をやっていました。
そして24時間365日無休のような環境で働く両親を見て「自営業だけはやりたくない」と思ったそうです。

両親の生活を見て育ったのですから、自営業が大変だという事だけは確かな“生情報”ですよね。

つまり当時の三田さんにとって確かな情報は、極端に言うと「自営業は嫌だ」という事だけでした。

彼の最初の目標は「サラリーマンになる事」だったのです。

だから大学の就職課の斡旋で、何のためらいもなくデパートに就職しました。

ところが実際に勤めてみたら、思ったより楽では無かったようです。
1年で辞めてしまい、やっぱり実家のお店を継ぐ事にしました。

そして実際にお店をやってみると、これがまた雲行きが怪しい環境だったのです。

三田さんがお店を始めた時期というのは、大型スーパーが進出し始めて、個人商店がものすごい勢いで衰退していった頃です。
「これでは、先が見えている」と思い、今度は手に職をつける方向で考える事にしました。

そこで思いついたのが、漫画家だったのです。

理想と現実が違うのは、よくある事

三田さんは、進路や就職の選択で人生が左右されるとは思っていないようです。

おまけに思いっきり「仕事って、皆が思ってるほど大変なものでも無いよ」と言い放っていました。

ここまで言ってくれると小気味が良いのですが、やっぱり「そうだろうか・・・?」と思ってしまいますよね。

ただ三田さんの警告として「あまり準備に労力を掛けすぎると、肝心の仕事が出来るエネルギーが枯渇してしまうよ」という事を指摘しています。

確かに言われてみれば、日本の学校制度は、受験や就活にばかりエネルギーを注いで、肝心の学業や仕事をおろそかにする風潮がありますよね。

入学したり入社するまでにエネルギーを使い果たしてしまい、そこから先のやる気やパワーが萎んでしまい、おまけに夢に描いていた社会生活と違うとわかって元気が無くなってしまったりします。

でも、見込みと現実が違うと思ったら、方向転換したって良いのです。

ところが、あまり準備を周到にし過ぎると、そこへ投入してしまったリソースに囚われて、その後の行動に制限が生まれてしまいます。

まずは自分が持っている“確かな情報”に基づいて行動して、その結果得られた経験や生情報を元に再構築をする・・・。

そういう柔軟性を持っていた方が、折れない人生を歩んで行けるのかもしれません。

「出来ない理由」も疑ってみる

三田さんは“才能”とか“意義”とか、ちゃんと言語化できないようなものについては考えなくていいと言っています。

例えば、やりたい事があるのに“才能がないから”と言ってチャレンジしない人がいたとします。

ところが、三田さんは才能にすら重きを置きません。

ある意味、才能がある人がその道に行くとは限らないのです。

才能と意思が一致するとは限らないし、別に才能だけあっても仕事にはならないからです。
才能というのは、スキルを磨いて初めて仕事というものに昇華します。

それに世の中の風潮として、最高峰の人ばかりが注目される事も注意しなければなりません。

その道のトップの人しか仕事が出来ないわけでは無い、という事に目を向ける必要があります。

例えば三田さんは漫画家ですが、漫画家だってピンからキリまであって、有名ではない漫画家もいるわけです。

別にその人だって、漫画家として生きているんですよね。

「創作の裏話」から見えてくるもの

最後に、やっぱり売れっ子漫画家というのは、どんなアイデア発想法をやっているのか?という事が気になりますよね。

ところが三田さんはそれを聞かれて「アイデアは自分で考えない!」と言い放ちました。

これを聞いた時は、ここまで正直に答える人も珍しいのではないかと、ちょっと驚きました。

編集者というのは普段あまり表に出てきませんが、実はこの人達は知の宝庫と言っていいような人たちです。
読書量は半端なく、守備範囲も広範です。

量よりも質で考えたら、グーグル先生よりも信頼できる存在なのではないでしょうか。
どうやら三田さんは、この人達の能力を上手く活用しているようです。

漫画家というのは一人で完結する職人だと思われがちですが、そこにはけっこう制作チームのようなものがあって、連携プレーで成功している例もたくさんあるようです。

大切なのは、変な思い込みから早い段階で抜け出し、猿真似でもいいからまずは行動してみて、そこから得られる経験や生情報をどれだけ蓄積して行けるか?にかかっているのだな、と思う話でした。

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