幸せになる為には、自覚的に生きている人をより多く知るという事が重要になってきます。

このシリーズでは、そのような自覚的に生きている人たちをご紹介します。


編集者とは究極のコンテンツ・ソムリエだと思います。
すさまじい読書量を持ち、大変な読解力を持っている人たちです。

でも良いコンテンツをチョイスできるのは当たり前で、さらに時代の要請に応えられなくてはなりませんよね。

本物であろうとすれば、企画を仕掛けて、著者と共同制作し、営業マンもやるという大変な仕事のようです。

でも本当に大切なのは“天才的な読解力やマーケティングの能力”というよりは、いかに内なる感性に耳を傾けられるか?という所が一番のポイントのような気もします。

誰も「自分の中に無いもの」など求めてはいないのではないでしょうか。

究極の「あるある」にボタンを押される

今回ご紹介するのは、編集者の柿内芳文(かきうち・よしふみ)さんです。
厳しい出版業界にありながら、数々のベストセラーを世に送り出している人です。

まず気になるのは、そのタイトルの斬新さです。

例えば、彼の初のミリオンセラーとなった『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』という本がありますが、なかなかキャッチーですよね。

何となく感じてはいたものの、どこかに埋もれていた感覚をクローズアップしてくれた感があります。

柿内さんは、そんな心の奥底にある「微妙な感覚」を発掘する名人のようです。

べつに特異な感覚という訳ではなく、多くの人が普段なんとなく感じているけど言葉にならない、概念として認識できていないようなモヤモヤしたものを、言語化したりイメージとして表現する事に成功しているのだと思います。

でも、こういう何となく感じているけどスルーしてしまうような事をキャッチするのって、やっぱり大変だと思います。

それが改めて言語化されると「あるある!」みたいな感じで、ちょっと嬉しいような気分になりますよね。

多かれ少なかれ誰もが感じているような事だけど、なかなか掘り起こせないようなものが出てきた時、人間は感動を覚えるのかもしれません。

『さおだけ屋』は会計学についての本ですが、日常の些細な疑問から会計学を解説していくという所がポイントになっているので、このタイトルはその特徴を見事に表現していると思います。

何か創作の秘訣でもあるのかと思うと、話を聞いてみたらけっこうベタで、アイデアが出るまで缶詰になって徹夜するとか、「売るためには何でもする」というスパルタ式の根性を発揮しているようです。

他にも普段から自分の内なる感覚を大切にしていて、周りに迎合しないように努めているように見えました。

思春期の頃などは、1年間くらい一人も友達がいないという時期を過ごしたそうです。

それでいて、時代時代で人々の心を掴む作品を世に送り出しているんですよね。

人間同士というのは、無理に話を合わせたり始終つるんでいなくても、自分の心の奥底をよ~く観察していれば、案外分かり会える感性を持ち合わせているのかもしれませんね。

ホリエモンの復帰活動に一役買っていた!?

柿内さんがプロデュースして話題になった作品には、ホリエモンこと堀江貴文さんの『ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく』という本もあります。

ホリエモンのライブドア事件の刑期満了とほぼ同時に始まった企画だそうです。

ユニークなのが、ほとんど1章くらいしか出来ていない未完の状態で、100店舗近い書店を著者と共に営業活動したそうです。

この”熱さ”こそが、まずは著者をノリノリにさせ、読者にまでそのエネルギーが波及していくのかもしれません。

何かに挑戦して失敗すると、大バッシングを受けて再起不能になる様をテレビなどで散々見させられると、何かに挑戦しようとする人がいなくなってしまいそうですよね。

この本が話題になったのは、単なる好奇心だけの話ではないと思います。

ニュースやバラエティ番組のホリエモン叩きを見て、うんざりした人たちも少なからずいたという事なのではないでしょうか。

嫌われるのは怖いけど、このままじゃいけない・・・

それとほとんど平行して出版されたのが、柿内さんの編集した作品の中でも最高のヒット作『嫌われる勇気』です。

内容は”アドラー心理学”についての解説本なので、特に新しい話という訳ではありません。

心理学といえば、ユングやフロイトが主流になっていますよね。

ところが、どうもこの二人の話って今の風潮にそぐわない感じがします。

そこへもってアドラーの説はちょっと新鮮で、今の空気に必要なものだったのかもしれません。

いま心の問題というのは、深刻になってきている反面で、一番置き去りにされているような所がありますよね。

横並びや人真似では上手くいかないという事は分かっている、でも頭ひとつ出るとすぐさま袋叩きに遭う・・・こんなジレンマに矛盾を感じて悩んでいる人の背中を押してくれるような本だと思います。

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