相談内容をザクっと要約させてもらって大変恐縮なんですが、
「自殺はしたくないけど、生きる気力が湧かない。生きるのが退屈だ」
という相談です。
私自身、『生きるのが退屈だ』と思った事はないんですが、
『生きる気力が湧かない』という経験は何度もあります。
今日は、そんな人に、『半分の剣』という話をします。
最初から、ビックリするくらい、端折ってしまいますけど;
ある時、『誘拐された子供』がいたんですね。
突然ですが、そういう話です。
その子の年は、だいたい小学6年生くらいです。
で、誘拐されて、柱にくくられていたんです。
周りは薄暗い部屋で、小さな倉庫みたいな所に入れられていたんですね。
当然、その子は、
「どうして?僕だけ……」
と、最初は、落ち込んで
やっぱり、泣き叫んでいました。
ですが、そのうち、
『助かりたい。こんなところで死ぬのは嫌だ!』
と強く思い始めたんです。
その時、どこからか、声が聞こえて来ました。
『助けてあげるよ。そこの足元の箱を蹴ってごらん』
周りをキョロキョロ見回してみましたが、
声の主が見つからなかったんです。
少し怖かったんですが、
その声が、とても優しくて、とにかく落ち着く声だったんで、
その子は不思議だな、と思いながらも、
足元の箱を蹴ってみたんです。
すると、あら不思議!
床からニョキッと剣が生えていたんですね。
でも、その子は、
『あんなに突き刺さってちゃ、僕の足では抜けないよ……どこのどなか知りませんが、
もっと他に良い方法はありませんか?』
て聞いてみたんです。
でも、いくら待っても、返事がないんですね。
その子も一瞬、諦めかけたんですが、でも、やっぱり助かりたい一心で、
爪先でチョイっと剣の柄を押してみたんです。
そしたら、実際には、剣の先っぽが折れていて、
剣は半分しかなかったんです。
つまり、床にそれほど深く刺さっていなかったので、
あっさりと抜けたんです。
『やった!やった!』
と、その子は喜んで、足でクイッと器用に、
その『半分の剣』を自分の方に引き寄せて、
なんとか柱からの脱出に成功しました。
日頃、お母さんから「足でモノを扱うな!」って、
怒られていたんですが、
ヒョンなところで役に立ったわけです。
話が脱線しました;
それで、とにかく柱の縄は切れたんですが、
まだ両手が縛られたままだったんです。
――とその時……
やっぱり!と言うか、ありがちですが、
犯人が戻って来てしまったんですね。
犯人はビックリです。
どこから刃物が出て来たんだって;
「コイツ!逃げようとしてやがったな!
ちょっと痛い目に合わしてやる!」
って、凄く怒り出しています。
ブツブツ言いながら犯人が近づいて来て、
そりゃもう、鼻息も荒く、目がギラギラして、
この世のモノとは思えない形相で迫って来たんです。
その子は、もう、ガタガタ震えて、
それでも、『もう戦うしかない』と開き直ったんですが、
ガタガタ震えながら、自分が持っている剣を見て、
『なんで半分しかないんだよ!これじゃ、戦えないよ』
ってガッカリしたんです。
で、涙を堪えながら、それでも、キッと犯人をにらみ付けたんです。
そしたら、その犯人、一瞬怯んだものの
「なんてぇ目をしやがる!生意気なガキだ!」
って、ますます逆上して足を速めたんです。
――とその時……
あんまり慌てたんで、さっき『半分の剣』が刺さっていたクボミに
爪先を引っ掛けて、前のめりに倒れて来たんです。
で、その時、その子は、
『今だ!』
って、自分の体を精一杯、思いっきり犯人に向かって、
伸ばしたんです。
「ドスン!ギャーーーー!」
って、一瞬、悲鳴が聞こえた後、
シーーーン
と静まり返りました。
で、その子が恐る恐る、薄目を開けると、
伸ばした手にしっかりと握られていた『半分の剣』の上に、
犯人の体が乗っかっていて、
その誘拐犯が絶命していました。
そのあと、警官達が入って来て、
メデタシめでたし
という話です。
どうも都合が良すぎる話ですが、
もう、私の言いたいことは、わかりますよね。
『戦って下さい!あなた、精一杯、自分の体を伸ばしていますか?』