最近は、パートタイマーでも有給休暇が支給される職場が出てきましたね。
これでパートの労働条件も改善されて、職場の空気も明るくなって皆ハッピーになるかと思いきや、どうもそうは思えない所があります。
今度はシフトに協力するかどうかでモメたり、残業の慢性化という問題が出てきたように思えます。
有給休暇の取得が可能になっても、結局は何も変わっていないような気がするのは何故なのでしょうか?
この記事では、職場で常に目の敵にされる「シフトに協力しないパート」側の視点で、その考え方をお伝えしたいと思います。
ですから、協力的でないパートに『シフトを強制したい管理者』や、シフトに協力してくれない同僚に『協力させたいパート側の人』には何の得にもならない記事になります。
シフトに協力してくれない!
まず一番問題になって来るのが『振出(振替出勤)』の問題です。
誰かが休んだとしても、そのぶん誰かが替わりに出勤してくれたら問題は無いわけですが、必ずしも他の誰かが出勤できるとは限りません。
パートの場合、休む権利を得たとしても、替わりに出勤する義務はない訳ですから・・・。
ここに、管理者がいつもシフト問題で頭を抱えなければならない矛盾があります。
別に一人休んだところで支障がないくらい人員がいれば別だと思いますが、現実は常にキツキツの状態で運用されています。
パートの人達は、有給は権利なので行使しますが、振替出勤の義務はないので、そこは常に曖昧なままです。
でも、この曖昧さが職場の空気を悪くする原因になっているのです。
職場の空気が険悪に!
実質的な強制力
法的にはパートの人達に振替出勤の強制はできないものの、社会的にはやはり雇用する側とされる側では立場が違います。
労働組合も無意味化した昨今では尚の事、いくら権利を振りかざした所で雇われる側の立場は弱いままです。
現場の管理者に振替出勤をお願いされたら、パートの人達は中々断りづらい気分になってしまいます。
そして、これは生活がかかっている人ほど強制力として働きます。
パート同士の衝突
他のケースでは、性格的に断りづらい人がいる一方で、「義務ではないのだから・・・」と断る人もいますよね。
ここにパート同士の軋轢(あつれき)が生まれます。
断る人から見たら、振替出勤する義務が無いから断っているのであって、断りたい人は自分と同じようにすれば済む話だと思っています。
でも『現場の管理者は、さぞ困っているだろう』と気遣って、いつも替わりに出勤している人から見たら「いつも簡単に断っている人」が自分の時間を奪っている敵に見えて来ます。
それが、しまいには個人的な嫌悪感になって、協力しない人に見えないプレッシャーを与え始めます。
でも、それこそが会社側の思惑なのではないでしょうか?
会社側の思惑
今回のテーマは、そもそも有給休暇が取れないというケースの問題ではありません。
休暇は取れても「結局はその分、振出として働かなければならない」という矛盾の部分です。
これには「一人休んだだけでも業務が滞る」という、あまりにもキツキツの人数で回している事が関係あると思います。
そもそも いくら有給休暇を導入しても、その分人を増やさなければ休暇を取れないのは当然のことですよね。
ところが現実は、シフトが常にキツキツなので、誰かが休めば他の誰かがその空白を埋めなければなりません。
どうしても替わりが見つからない場合は、残業になります。
こうして有給休暇が支給されても、結局一人一人の労働時間としては変わらないわけです。
ただ、お給料的には有給の分が増える事になりますね。
ここが、あまり従業員から文句が出ない理由だと思います。
「収入が増えれば良い」と思っている人にとっては、これで良いかもしれません。
でもパートタイムの仕事に就いている人の中には、時間の自由が利かない人がいます。
そもそも他にしなければならない事があるから、パートタイムで働いているのではないでしょうか?
有給休暇の本来の趣旨は、働く人が心身を休めるための「労働時間の短縮」だと思います。
ところが実際は、有給の見返りとして契約時とは違う曜日や時間帯の出勤を要求されてしまいます。
そして会社側は、この法律の趣旨と実際の運用のギャップを「従業員同士お互いに牽制させること」で埋めているのです。
パートタイマーの有給休暇の現状は、形式的には有給を与えていながら実際には取らせないブラック企業よりはマシというだけの話だと思います。
シフトに協力できない理由
パートタイマーがシフトに協力できない理由として、有給が「本当に休みたい時に休めない」という問題もあると思います。
有給取得の現実として「一定期間の事前申請」というルールを設けている職場が多いようです。
ところが、体調不良というものは事前に分かるものではありませんよね。
風邪を引いて当日に休暇を申し出た場合は、欠勤になります。
シフトの穴を埋める為に無理をして体調を崩したとしても、突然休めば やっぱり欠勤です。
誰か一人が倒れたら、ドミノ倒しのようにシフトが乱れるというのは実際よくある現象です。
パートタイムで働く人は、可能な限り出勤するのが多数派だと思います。
よほど経済的に余裕のある人でもない限り、本当は4日空いていても敢えて3日にするという人は少ないと思います。
そういう人が1日多く出勤するのは問題ないと思いますが、4日働くのがマックスな人が5日出るというのは、やはりどこかで無理をする訳です。
いくら有給休暇を与えてもらっても体調不良の時には使えず、都合の悪い時間帯に働かされるのでは、あまり有り難い存在とも言えない気分です。
本来の有給休暇の意味とは
有給休暇とは本来、働く人が安心して仕事を継続できる環境を作るためのセーフティーネットなのだと思います。
人間ときには病気や怪我をしたり、止むに止まれぬ事情で仕事を休まなければならない時もありますね。
そういう場合にも、お給料を引かれたり、仕事を辞めたりせずに済む「勤労保険」みたいなものではないでしょうか。
そのお陰で従業員は長期的に働けて、雇う側も常に新人の採用や教育という「コスト」を抑える事が出来るという計算に基づいていると思います。
振替出勤の心理的な強制や残業の常態化は、ごくミクロな視点でしか現場が見えていない狭量な経営の現れではないでしょうか。