私自身、サラリーマンとしては、年収こそ高収入ということにはならなかったが、小さな会社の中で、地位的には納得できるレベルまでは行けたと思う。
私の父は、サラリーマンながら年収1800万円近くあったが、今は年金生活をしている。
当然、私は日頃から尊敬していたので、自分が新入社員として、そろそろ入社式という頃にアドバイスが欲しくなった。
あとで『これを知っておけば・・・』と後悔したくなかったからだ。
大学を卒業して入社までの春休みに実家に帰って、
一緒に酒を飲んでいる時に、思い切って聞いてみた。
「オレ、これから社会人になるわけだけど、何かアドバイスある?」
今、考えると、かなり直球の質問だ(偉そうで恥ずかしくもある)。
父は、一瞬考え込んだが、すぐに
「社会人になって大切なことは、たった2つ。挨拶は気持ちよく。なるべく大きな声でハッキリと笑顔で……」
学校では、「うぃーっす」みたいな感じだったけど、バイト先は、体育会系だったこともあり、特に違和感はなかった。
元々、文化系の精神を持っていたから、最初や嫌でたまらなかったけど、3年間、体育会系のバイトが出来たことは、間違いなくプラスになっていると思う。
「もう一つは?」
私の父は忘れっぽい。ふだんは無口で、放っておいたら一言も口をきかない。
アルコールが入ったとき、こちらが聞いた事だけ語ってくれる。
「人さまの話を聞くときは、必ずメモを取ること。ちゃんとメモ帳を持って行って、覚えられるとわかっていることでも書くこと。何なら、書いているフリでも良い」
「???書いているフリ?何の意味があるの?」
そのときは本当にわからなかった。
だって、それまで、そんな事したことがなかったし、
『複雑な指示でも覚えられるオレスゲぇ』みたいな感覚があったからだ。
「みんな誰でも自分に自信がない。自分の仕事に価値を感じている人も少ない。だから、自分の言う事を真剣に聞いてくれる人が現れると嬉しいもんだ」
そのときは「そんなもんかな?」と思ったけど、やってみて公開は絶大だった。
たまに「あとで責められそうだから、オレの話をメモるな!」というおかしな先輩もいたけど、たいていは父が教えてくれたとおりで、なぜか可愛がられた。
可愛がられると、何かと教えてもらえる機会が増えるものだ。
最初メモを取るなと怒っていた人ですら、「いえ、自分、記憶力がアレなもので・・・」と言って無理矢理メモを取っているうちに、
「こいつは熱心で見込みがある」という感じに変わって、「二人で飲もう」と誘ってくれるようになった(勿論、先方のおごりだ)。
新人の時は、仕事が出来なく当たり前だ。
だからこそ、可愛がられるか、どうかが、その後の社会人生活に大きくかかわって来るのだ。
何年もやってみて、本当にビックリするけど、この2つとも出来ている人って、全体の2、3%くらいしかいないんじゃないかな?
むしろ、中堅どころになればなるほど、出来なくなって行くような気もする。
ちなみ後輩の話を聞く時も同じですよ。