最近は社員を雇わないで、パートを中心に回す企業が増えて来ています。

社員が少ないため、効率的にパートを使おうとして、ある特定の作業に係などを作るという策で乗り切ろうとする職場があります。

ところがこの係の制度を導入すると、職場の空気が悪くなり、ひいては、混乱に至る可能性があります。

今回は、係を設けると職場の空気が悪くなってしまう理由と、既に係を設けてしまった職場がリカバリーする方法をご紹介します。

モチベーションが低い職場で起こりがちなこと

ある職場では、10数人のパートが働いています。

基本的に同じ作業をやっているのですが、必然的に長く勤めている人、中期、新人というカテゴリーに分かれて行きます。

でも、カテゴリーはそれだけではありません。必然的に能力にも差が出て来ます。

こういう時、新人社員がやりがちな間違いがあります。

これはちゃんと監督されている職場でも起こりうる事です。

本来、みんなで同一の仕事をしていたはずなのに、『この仕事は難易度が高いかも……』または『この仕事はミスが許されない』といった理由から、だんだんとベテランや高能力の人へ、ある特定の仕事を担当させるようになって行くのです。

この記事では、この現象を『係制の導入』として説明します。

実は、ここに隠された大きなデメリットがあるのです。

そして、この事が後々、その職場全体のモチベーションの低下と混乱を引き起こして行く事になるのです。

なぜ係が生まれるのか?

ある特定の作業に対して、係制度を導入して、担当を作ると、一見すると効率が良くなったように錯覚します。

ところが仕事が出来る人に係を固定させるのは、長期的には逆効果になる可能性があります。

まず前提として確認しておきたいパートの定義があります。

それは『パートとは、全員が同じ仕事をこなすことで、お互いに替わり効く状態を作っておく』というものです。

よく『同一労働、同一賃金』と言いますが、もちろん経験の差によって、若干、時給は異なって来ます。

でも、基本的には『同一労働、同一賃金』で、そんなに差ない状態を作っておくのがパートという制度です。

ところが会社としては、ある特定の作業に関しては、『一番正確で効率の良い人に担当してもらいたい』という状況が出て来る事があります。

その時、その作業の係を作って、専業にしてしまおうという安易な結論を導いてしまったりするのです。

係を設けると、必然的に、だんだんと仕事が正確で早い人に係を任せるようになります。

ところが、仕事が出来る人に係として、ある特定の仕事を任せてしまうと、困った事が起こり始めます。

不公平感の発生

係になった人の心理

さて、係になった人の心理はどのように変化するでしょうか?

自分だけ、大した時給アップもしてくれないのに、不公平な扱いを受けているという被害者意識が芽生えて行きます。

当然ながら、イライラして、モチベーションが下がります。

人によっては係以外の人達にストレスを発散するようになります。

そして『自分は、それが許される存在だ』と思い込むようになります。

係以外の人達の心理

一方、係以外の人達の心理も変化して行きます。

係の人のイライラを吸収して行くうちに、意識が段々と『お客さん化』して行くのです。

『お客さん化』とは、言い換えると『おまかせモード』です。

係になったパートの人と、同じ立場であるにも関わらず、だんだんと係の人に注文を付けたり、依存するようになって行くのです。

これには自己正当化する為に、『きっとあの係にされた人は、自分達よりも、かなり時給が高いに違いない』と思うようになります。

常識的に考えれば、そんな事はないはずですが、その疑念が、依存体質を増長させる事になります。

こうして、係にされたパートと、係以外の人達の間で徐々に関係が悪化して行き、結果的に職場の空気は悪くなってしまうのです。

混乱の始まり

職場の雰囲気が悪くなるだけでも問題ですが、この問題、それだけでは留まりません。

実はもっと深刻な問題へ発展して行くのです。

係が固定すると、係以外の人達がだんだん、係の人に依存するようになるという話をしました。

これは、別に悪気があってやっている訳ではありませんが、この状態が継続すると、困った状態が生まれます。

だんだん係の人と、それ以外の人達との間に情報格差が生じてしまうのです。

そして、情報量に差がついてしまうため、係の人の立場がますます理解できなくなってしまうのです。

このような状態がずっと続く事はありません。

この不公平感は、そのうちに爆発します。

では、どのような結末になるのでしょうか?

そうです。その係にされたベテランのパートの “離職” という結末を迎える事になります。

大して時給に差があるわけでもないのに、責任だけが増えて行き、誰も自分の気持ちがわかってくれないと感じるようになると、誰でもいつか限界が来るものです。

こうなると、もうその職場は大混乱です。

なにせ一番仕事が出来る人が辞めてしまったのですから・・・

そして皮肉な事に、結果として、依存体質がしっかりと染み付いた仕事が出来ないパートばかりが残ってしまうのです。

パートに係を設ける時の注意点

これまで述べて来たように、そもそも初めから係を設けないのがベストなのですが、既に係を作ってしまった場合はどうすれば良いのでしょうか?

係の制度を導入してまったら、あとは運用でなんとかするしかありません。

係を設けて、なおパートのモチベーションを下げないようにする、そんな上手い方法があるんでしょうか?

とてもシンプルな方法があります。原点に戻るのです。

最初のパート定義を思い出して下さい。

『パートとは、全員が同じ仕事をこなすことで、お互いに替わり効く状態を作っておく』
でした。

つまり、係を担当する人を固定させないという事です。

係をローテーション制にして全員で担当するのです。

これは一見、効率が悪いように思えますね。

でもパート視点では、この方が長期的には、モチベーションが下がりづらいはずです。

不公平感の解消

どうして係を交代制にすれば、長期的に見てパートのモチベーションが下がらないのでしょうか?

一つには、係を固定させない事で不公平感が無くなるからです。

でも、理由はそれだけではありません。

最も重要な効果は、パート一人ひとりの意識が『おまかせモード』にならないという事です。

係を交代制にすれば、自分にも必ずその担当が回って来ます。

だから何かその係特有のトラブルが発生した時に、その仕事に対して無関心ではいられなくなるのです。

結局のところ、ある特定の仕事の難しさや煩わしさは、実際にやってみた人にしかわかりません。

係になった時の苦労が分かると、職場みんなの意識が『おまかせモード』から『お助けモード』に切り替わります。

『お助けモード』とは?

『お助けモード』とはどんな状態でしょうか?

もちろん係以外の人達が係の人を助けようという気持ちが生まれるという事なのですが、『お助けモード』の本当の効果はそれだけではありません。

実はここにもっと重要な効果があるのです。

それは、自分が係になった時、「お互い様」という感覚で、気軽に係以外の人達に助けを求めやすくなるのです。

この『自分がピンチの時に他人に助けを求められる』という感覚ほどモチベーションに影響を与えるものってないと思いませんか?

子供の頃から「他人に頼るな!自分の責任の範囲は、自分だけで何とかしろ!」と風潮がありますので、どんどん責任逃れして行く傾向になります。

全員で情報や苦労を共有することで、お互いに助け合えるシステムが出来上がるのです。

一人や二人の優秀なパートに任せすぎて他のメンバーの能力が下がるより、全体のパフォーマンスも良くなると思います。

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