『パートがすぐ辞める職場』と一口に言っても理由は様々で
一見 数値化しにくい問題ですが
実は、わかりやすい危険信号があるんです。

それは社員が色々な「係」を作って
それをパートにやらせる事が多くなっている状況です。

一見すると、社員が意欲的に
管理体制を築いているように見えますが
実のところ この現象は、社員が
「パートの管理を放棄」し始めているサインなのです。

これを見逃してしまうと
パートタイマーの意欲が下がるだけでなく
ゆくゆくは社員のモチベーションも下がり
職場全体の空気が重くなって行くのです。

結果として、パートタイマーの離職率も上昇してしまいます。

今回は、この現象を順を追って説明したいと思います。

終わりの始まり

パートの仕事に係を設けるという行為は一見すると、まるで管理を工夫しているように見えてしまいますが、実は社員が管理の仕事を放棄し始めている前兆です。

例として、ここではパートが何十人もローテーションで働いていて、社員が2,3人置かれているような職場を想定してみます。

まず最も、最悪のケースから話を始めましょう。

それは社員が仕事全体の指揮を『パート頭』のような存在に委ねている職場です。社員が完全に管理を放棄してしまっていると言えるのですが、というか、もはや、そういう存在でも無ければ、組織として機能できないわけです。

カオス的な職場では、物覚えが良く、気が効き、大きな声が出せる人が、自然発生的にリーダーになって行きます。

もちろん、最初から管理職として採用されていたわけでありません。
ところが現場の社員が “これ幸い” とばかりに、そのようなパートの中で一番仕事が出来る人に少しづつ管理系の仕事を与えていき、その人をパート頭に据える、というような流れです。

こうなったら、あとは雪だるま式に職場の空気が淀んで行くのは必至です。

この『パート頭』が育つにつれて、現場の社員は、ますます管理系の仕事を放棄するようになります。

そして、いつの間にか、立場が完全に入れ替わります。

もう暫くすると、誰も社員の言う事など聞かなくなるでしょう。

仮に『パート頭』と社員が異なる指示を出した場合、多くのパートは『パート頭』の指示に従うようになります。

放棄の再生産

さて、問題はこれだけに収まりません。
残念ながら、パートに特別なモチベーションなど期待できないからです。

それもそのはずで、いくら仕事を頑張ったところで、昇格どころか昇給も無い、何の夢も無いところに強いモチベーションなど生まれるはずがありません。

だんだん社員の本来の管理系の仕事させられて、しかも、ほんのちょっと色を付けられた程度の時給しかもらえない『パート頭』は考えます。

元々、能力はあるのですから、普通に厄介な仕事を軽減させる方法を考えるわけです。

そして、ある日、気づきます。「そうだ!自分がやられた事と同じ事をすれば良いんだ!」と・・・

『パート頭』の手に余った業務は、今度は他のパート達に「係」を設けて、割り振って行く事になります。

社員も自分がやった事だから、注意が出来ません。それに注意した所で、もう立場が完全に入れ替わってしまっています。他のパート達はもちろんのこと、『パート頭』が言う事を聞くはずがありません。

パートのモチベーションが下がる理由

パートに係を設ける弊害として、まずはパートが「係でなければ」仕事をしなくなるという事があります。

「言われた事しかしない」「与えられた仕事以外まで手を広げない」のがほとんどで、パートに自主的・積極的になれというのは難しい事なのです。

ところが、業務を「係」化してしまうと、パートはその係の仕事だけやっていれば良いと思ってしまいます。

「係」を作る事で「係でなければ動かない」という状況が出来上がってしまうのです。

職場の空気が悪くなる理由

係を設ける事で起こる問題は、パートのモチベーションを下げるだけではありません。

業務をどんどん細分化して行き、『係』として割り振って行くと、最後にはどうしても係にする事が難しい業務が残ります。

片付けや後始末のような、ちょっと地味めの緊急ではない、いわゆる雑用と呼ばれるような業務です。

そういう雑用的な仕事は、結局のところ「よく気が付く人」や「生真面目な人」がやる事になります。

でも、そういう人だって積極的な気分でやっている訳ではなく、誰もやらないから仕方なくやっているだけです。

だんだん「自分だけが割りを食わされている」という気分になり、それに対応してくれない社員や『パート頭』が恨めしくなって行き、モチベーションが下がって行きます。

終わりの顕在化

そして遂に『パート頭』の人も病んで行きます。

最初こそ、係を作って割り振って、仕事を軽減させる事に成功して気分が良かったずなのですが・・・

「本当は、皆に嫌われているんだろうなあ・・・」という、心理的な痛みが積み重なって覆いかぶさって来るのです。

実は何が辛いって、客からの罵声や上司の怒号よりも、同僚たちの恨みほど辛いものはありません。

単純作業さえやっていれば良い他のパート達と、それほど待遇が違うわけでもないのに、自分だけ周りに疎まれているという疎外感を感じるようになりイライラして周りのパート達と衝突するようになって行きます。

さらに係にもなれず、雑用に気づけない人は、「ダメな人」認定されやすくなり、どんどん居心地が悪くなっていきます。

こうして、職場全体の空気が悪くなってしまうのです。

まとめ

全てのはじまりは、社員がいちいち指示したり仕事を振るのを面倒くさがって、自分の管理の仕事の放棄する事から始まります。

最初の例では『パート頭』を設ける事でしたが、管理系の仕事の一部を係化するのでも結局は同じ事になります。

管理という本来、社員の担当すべき仕事を押し付けられているのですから、面白くない筈です。

パートに自主的・積極的になれというのは難しい事なのです。

そこに期待するよりも、社員が臨機応変に、手が空いていそうな人物を見つけて、その都度仕事を振るというやり方の方が、実は職場の空気が悪くなって行かないのです。係を作らなければ雑用という概念が生まれないので、パート間の不平等感が生まれるはずもありません。もちろん社員の人は大変ですが、その替わり、パートが指示に従わないという事も起こらないでしょう。


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