「ミスが多い」、「いつまで経ってもミスが減らない」という職場ほど、意外とダブルチェックなどのしくみが組み込まれているものです。

それでもミスが無くならないという事は、ダブルチェックが機能していない証拠ですよね。

「人間だからミスは仕方が無い」と言ってしまえば それまでですが、本当に人的なミスであれば、徐々に減少しても良いような気がしませんか?

今回はミスが無くならない理由と、その対策をご紹介します。

「注意して」は意味がない!?

例えば、ミスが多い職場への最初のアプローチとして「ミスが多いので気を付けてください」という注意をする事が多いと思います。

でも、これって職場の従業員全員への通達ですよね。

心理学的に言うと「みんな」に向けての通達って、はっきり言って意味がありません。

というか、むしろ気を付けて欲しい人には届かず、あまり注意する必要がない人の方が敏感に反応する傾向があると思います。

ミスが少ない人というのは当事者意識が強いので、全員への通達も自分事として捉えて考えるからです。

逆に、本当に気をつけて欲しいような人ほど、自分に向けられたメッセージだとは思わないものです。

だから、ミスは全体の責任として全員に向けて注意を喚起しても、あまり効果は期待できません。

イケてない対策の見本

注意の喚起でもミスが無くならないと、今度はダブルチェック、トリプルチェックと、チェック機構を何重にも張り巡らせたりしますよね。

例えば、あるネットスーパーの職場を例に話をしてみます。

「ネットスーパーって何?」

と思った人もいるかと思いますので、ザックリと説明すると、
スーパーマーケットのサービスの一つで、ネット経由で注文をもらって、お客さんに配達するというものです。

とあるネットスーパーの職場で起きていたことです。

このネットスーパーでは、「集荷作業」というプロセスにおいて、頻繁にミスが起きていました。

このミスを減らすために、様々な対策が講じられていましたが、まったく効果がありませんでした。

ネットスーパーにおける「集荷作業」とは、ネット経由で受けた注文の商品を売り場から集めてくるというものです。

集荷の担当者が、注文リストを見ながら、売り場から商品を買い物カゴにどんどん入れて行きます。

そういう店員を目にした人もいるかもしれませんね。

ちょっと話が込み入って来ますので、結論だけ知りたい人は次の見出しをスキップしてもかまいせん。

どこでミスが起きていたか?

ミスは、いつも集荷の担当者が、注文リストを見ながら商品を集める段階で発生していました。

このミスが起こらないように、何度もチェックするプロセスがありました。

このプロセスについて細かく説明すると、

1.まず集まった商品を一通りチェックします。

2.顧客ごとに仕分けする段階で、再度チェックします。

3.最後に梱包する段階で、もう一度チェックします。

一番最初に売り場の担当者が、集めながらリストにチェックする事も含めたら、実に4回もチェックしているのです。

不思議なことに、それでも途中で伝票が紛失したりして、一番最後の梱包の段階で最初のプロセスに戻ってしまったりするのです。

これでは手間ばかり掛かってしまい、あまり効果が高いとは言えないですよね。

チェックの回数を増やすと一見ミスが減りそうですが、実は次々と別の担当者の手に渡ることで、連絡漏れなどの新たなトラブルが生まれていました。

やっぱりミスというのは対処療法ではダメで、原因を追求しなければ解決は出来ないようです。

ミスが無くならない理由

結論から先に言いますと、ミスが無くならない理由は、ミスの対処法が間違っているからです。

集荷ミスのパターンは、「抜け」「間違い」「欠品」の3種類です。

そして抜けていた商品は、ネットスーパーの人間がまとめて売り場に取りに行きます。

つまり集荷作業に携わっていた人は、本当に”ただ集めるだけ”で、その後の流れは一切わからない状態だったのです。

集荷作業をしている人と、その結果生じたミスをカバーする人が別々の職場で、さらにこの両者が連絡を取り合える仕組みになっていなかったのです。

集荷ミスをした人は、自分が何を間違えたのかどころか、ミスをした事すら知らされずに一日の仕事が終わるのです。

自分のミスを知ることが出来なければ、同じようなミスを繰り返しても不思議はないですよね。

でも、きっとどこかで「ミスが多い」という事実だけは聞かされているのだと思います。

「もっと注意してください」と言われているかもしれません。

でもミスをした人はいつ、どこで、どう間違ったのかがわかりません。

その場で言わないで、後になって文句を言われるというのも気分が悪いですよね。

具体的に指摘されなければ、どこをどう注意すれば良いかもわかりません。

ポイントが絞れないと、まんべんなく注意しなければならないので、こんどは必要以上に作業が遅くなってしまいます。

ミスを防止する方法

ミスが無くならない原因は、ミスをした当人に対して責任を追求しないからです。

だったら、別の人間がチェックをしたとしても、ミスが発覚した時点で担当者に処理させれば良いのです。

そうすれば担当者も自分のミスを自覚して、間違いやすいポイントに気付く事が出来ますよね。
そして、だんだん同じようなミスはしなくなると思います。

それを別の人間がフォローしてしまうから、いつまで経ってもミスが無くならないのです。

仕事というのは、たとえチェックするシステムがあったとしても、担当者自身が自分のミスを知る必要があります。

このネットスーパーの例で言うと、ネットスーパーのスタッフがチェックをしてミスを見つけたら、そのリカバリーは集荷の担当者にしてもらうべきです。

そうすれば、チェックは1回か2回で済むはずです。
そしてミスそのものも格段に減ると思います。

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