パート中心の職場”あるある”の中に、『社員の指示内容』と、実際の『現場で運用されている内容』に食い違いがある場合があります。
最初に社員が指示を出した方法と、パートが実際にやる方法に違っているのです。
これはパートの人の方が、その現場ではスペシャリストとして業務に従事していて、社員が現場の事情にあまり通じていない場合によくある現象です。
役職上では社員が上だったとしても、事実上パートタイマーが実権を握っている状態です。
真の被害者はこの人たちです
パートでも、実力があって、一つの業務に長年従事していたりすると「代わりが効かない」存在になる事がありますよね。
パートとは名ばかりで、職場にとって欠かせないスペシャリストになってしまうのです。
そういう人が、自分より業務に詳しくない社員に指示されても「その指示は的確ではない」と判断する事があると思います。
そして、そのパートが社員の指示通りに動かなかったとしても、まず懲戒免職の対象にはならないでしょう。
いったんスペシャリストになったパートは、代わりが効かない存在だからです。
さて、ここである被害者たちが生まれる事になります。
それは、そのスペシャリストのパート以外の “他のパートの人達” です。
仮に『社員』と『スペシャリストのパート』の指示内容が違っていたとしましょう。
二人の間で意見が違うので、他のパートの人達はどっちの指示に従えば良いの混乱します。
組織としては、あまり良くない状態ですよね。職場に2人の上司がいて、それぞれが別の指示を出しているようなものです。
あるパートが社員の言う事を聞かなくなる瞬間とは
そもそも、この問題が発生した原因は何でしょうか?
それはある社員が『自分の管理がラクになりそうだ・・・』との理由から、一部のパートにある特定の役割を与えて専業化させた事に起因します。
言い方を変えれば、その最初に『係』などの役割を特定のパートに与えた社員は自分の仕事の一部を放棄した事になります。
そうなれば、いずれその特定のスキルやノウハウが “そのパートの人だけに” 蓄積するのは避けられません。
そのパートがいなければ業務が回らないという状態になったら、職場でのその人の立場が上がっていくのが当然です。
事実上はスペシャリストなのに、いつまで経っても待遇だけは一般パートのままでは、モチベーションが上がりようがありません。
時には、その不満が、どちらの指示内容でも構わないケースでは、あえて社員と違う指示内容を出したくなったとしてもムリはありません。
採用時に身分が決まってしまう
だから本来、パートと言えどもスペシャリストに育ってしまったら、インセンティブを与えて繋ぎ止める必要があるのです。
もちろん最初からそうならないように、社員には『係などを勝手に作る事』を許してはいけません。それはその社員の仕事の放棄と言えるからです。
本来パートの作業内容というのは、いつでも替わりがきく作業に限定すべきだからです。
そのようにしないで、あるパートがスペシャリストとして育ってしまったのなら、ちゃんと報いなければなりません。
ところが現行のシステムでは、社員で採用されればずっと社員だし、パートで採用されたらパートのままが一般的です。
巷でよく話題に出る『同一労働同一賃金』ですが、少し定義が漠然としていると言えます。
社員がすべき仕事だった内容をパートにやらせて、そのパートが習得したら、採用システムに係わらず社員として扱うべきだという事です。
採用システムをどのように変革させれば良いか?
これまでの採用制度の展開は、幹部候補として社員を採用してから、ゼネラリストとして育成して行き、その中からトップに相応しい人をピックアップするという方法でした。でも今の経営環境においては、そのような贅沢は許されないのではないでしょうか。
それよりも、スペシャリストの中から幹部候補を発掘する方が現実的ではないでしょうか。
現行システムでは、スペシャリストに育った優秀なパートを手放す恐れがあるだけでなく、能力のない社員をパートに降格させる事も出来ません。
具体的には、一つの分野でスペシャリストとして頭角を現した人に、こんどは別のジャンルで仕事をさせてみます。
そして2つの分野でスペシャリストになる事ができた人物に、また別の分野で仕事をさせ、3つとも成功させた人物を幹部候補にするのです。
なぜ3つなのかというと、2つまでなら一個人の力で解決が可能だからです。
でも3つ以上となると、個人の力では無理になってきます。
もし3つ以上の分野でスペシャリストになれる人がいたとしたら、恐らくその人物は『他人の力を引き出す能力』を持っているという事です。
個人の能力も高く、他者の力も借りる事が出来る人物なら、幹部候補と見なしても良いのではないでしょうか?
ただ、こういう人物は、継続手的に然るべき報酬を与えておかないと、他社で能力を発揮する事になるでしょう。