物が売れない時代になって久しく、商品開発も販売促進も苦戦を強いられ続けていますよね。

誰もが新しい価値を見つけたり、生み出す事に必死だと思います。

でも、これからは「本当の価値」という視点を抜きにして生き残る事は難しそうです。

いま一度「価値とは何なのか?」という疑問について考え直す必要があるのかもしれません。

例えば、価値は「モノ」や「サービス」にあるのだという考えが根強いですが、それは本当なのでしょうか?

物に価値があるわけではない

「価値」についての考え方には色々な説があると思いますが、ここでは「売り手」の理屈ではなく、一般的な人々が認識している「価値」について掘り下げてみます。

まず価値というのは、商品などの「物」そものもに内在している訳では無いのではないでしょうか。

価値とは、物と人の間にある「距離」の部分の事なのだと思います。

例えば、現代のように流通網が発達する以前の社会では、山では塩や魚が貴重品だったし、海辺では山の幸が高級品でしたよね。

逆に、海辺では塩や魚の価値は低く、山では山の幸の価値は低くなります。

この差は、海と山の間の「距離」だという事がわかると思います。

だから極端な例を挙げると、もしSF物語みたいにテレポーテーションが可能になった時、海と山との間で生じる価値の差は完全に無くなってしまいますよね。

価値の尺度

価値とは、人々がそのモノとの間に感じる「距離感」なのだという話をしました。

この話をもう少し掘り下げて、更に抽象化してみると、人が感じる「距離」の正体は「時間」だという事が分かってきます。

また海辺に住む人の話に例えてみたいと思います。

海辺の人が自分で山の幸を取りに行く場合に感じる距離感というのは、それにかかる時間や労力として認識されますよね。

何時間汽車に乗る必要があるのか?
何時間歩かなければならないのか?
日帰りが無理なら宿泊する必要も出てくる・・・

というような時間の感覚が、距離感の尺度になると思います。

価値は人によって変化する

価値とはモノそのものにあるのではなく、モノと人との距離であり、その距離の正体は時間である、という話をしてきました。

つまり、モノと人との間にある時間的な「差」が価値という事なのですが、価値の尺度としてもう一つのファクターがあります。

それは、人が「時間」に対してどれだけの価値を認めるか?という事です。

例えば、1日じゅう時間を持て余している人と、たとえ1分でも貴重だという人とでは、同じ時間でも価値が違ってきます。

1分でも貴重な人にとっては、時間が有り余っている人に比べて、時間に対する価値が高くなりますよね。

この違いが現れている例として、電車の特急券と普通券の価格の違いなどがあると思います。

でも この距離や時間も、目に見える形だったり、数字に換算できたりと、感覚的に分かるものでなければ、やはり価値があるとは言えません。

人が「認識」出来て初めて価値が生まれるのです。

新たな価値の創造するということ

最後に、新たに価値を創造する事についても考えてみましょう。

ここまで価値とは『時間の認識』だという話をしました。

サラッと絵が描ける人とそうでない人とは、絵に対する『時間の認識』が違います。
文章が書ける人とそうでない人も同様です。書けない人もいつか書けるようになるかもしれませんが、それがいつか?という事はわからないわけですから、その場合の価値の認識に個人差が生まれます。

少し飛躍する話に聞こえるかもしれませんが、つまり『新たな価値の創造』とは、常日頃、何となく抱いている願望(時間がか関係します)を、明確にする事で生まれるのです。

明確にするには「言葉」が必要です。他人と概念を共有するには、言葉がなければ伝わらないからです。

だから、新たな価値を創造するには「言葉の発明」をしなければならないのです。

少し抽象的な表現を使えば、『時間をコトバで切り取る』のです。

そういう事例は、私達の身の回りに溢れています。

イメージが浮かびやすい商品名や造語、まだあまり知られていないような言葉を使ったりして、今までモヤモヤしていたイメージが明確になる事がありますね。

例えば「コエンザイムQ10」という言葉が流行った事がありましたよね。
あのサプリメントに価値が生まれた理由を考えてみたいと思います。

まず、人には「老化を防止したい」という願望がありますよね。老化・・・時間と関係があるコトバです。

でもその対策となると、体を鍛えるとか、食べ物に気を付けるとか、睡眠を取るとか色々とありますが、どれもけっこう大変そうな割に決め手がない感じです。

この漠然とした願望に対して、老化防止のために出来る事を単純化したのがコエンザイムQ10です。

言葉を作った訳ではありませんが、まだあまり知られていなかった成分に注目して、楽して老化を防止するイメージを商品化したのです。

こんなふうに、人々がふだん漠然と思っているような願望を、言葉で表現する事が出来たら、新しい価値が生まれます。

今まで皆がハッキリと認識できていなかったような、モヤモヤとした事で、時間に関係があること・・・そういう概念の明確化に成功したとき、新しい価値が生まれるのです。

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