「奥さんが、うつ病的な状態で悩んでいる」
という話がありました。
最初のうちは、ご主人も
『恐らく産後で不安定になっているだけで、気分の問題だから
そのうち治るだろう』とタカをくくっていたんですが、
良くなるどころか、どんどん酷くなるばかりで……
最初は『電車に乗れなくなって……』から始まって、
遂には自宅から出る事も出来なくなったそうです。
でも、べつにお子さんや旦那さんとは普通に話をするし
外出する必要もないので、
それでも良いんじゃないかと思っていたそうなんですが、
奥さんが「パートには出たいと」言うらしいのです。
パートに出たいとなると、当然 家から出ないといけないし、
時には電車に乗った方が
良い時給が貰える場合もあるから、
「何とかしないとね」と言っていたそうです。
でも全く良くならないので
「病院に行こうか」とも相談していたんですが、
お互いに精神科とか神経科、
カウンセリングといったものに抵抗があって
自分でリラックスする体操したり、気持ちを切り替えたり、
実家に帰ってみたりして過ごしていたようです。
結局どうなったかと言うと、
そういう状態を10年以上も続けていたけど、
遂には思い切って病院に行って、薬を処方してもらったら、
一発で治ってしまったというんです。
電車にも乗れるようになって、パートも出来るようになり、
今ではパート長になって、バイトの高校生の子達をしっかり使って、
バリバリやっているそうです。
目次
うつ病は「脳の病気」
病院に行って薬を処方してもらえば治る うつ病と、
薬では治らない うつ病についての話に入る前に、
まずは ひとつの関門があるという事を伝えたいと思いjます。
ここが一番のハードルになるのですが、
精神科や心療内科の受診というのは
どうしても抵抗があるという事です。
自分でも家族の場合でも、おかしいなと思ったら、
まずは『インフルエンザにでもかかったかな?』
というような軽い気持で神経科の扉を叩いて、
薬を処方してもらって下さい。
本当に軽いうつ病なら、一発で治ってしまいます。
特に何らかの体調不良など、
バランスを崩したのが原因なら、効果てきめんです。
最近では、
うつ病は脳内物質である「ドーパミン」が出なくなるという
脳の病気だという事が解ってきているからです。
それを補助してくれる薬が実用化されていて、
何十年も前の薬のように
「副作用でおかしくなるんじゃないか?」
という危険は無くなっています。
つまり「心のありよう」とかいう事ではなくて、
物理的な問題だという事です。
そして一時的にでも不安が無くなると、それがトリガーとなって、
自然と薬を使わなくても調子を取り戻す
ケースが増えて来ています。
だから病院に行かないで「物の考え方」うんぬんとか
「生活習慣を変える」などの対処をしていると
ストレスでむしろ逆効果になってしまいます。
心の病気を疑うとき
薬を処方してもらっても治らなかったり
薬が手放せなくなってしまったときは、
心の病気を疑った方が良いかもしれません。
これは「脳の病気」と区別した方が良いんです。
今度は「物の考え方」や「世界の捉え方」という要素が
重要になってきます。
つまり「心のありよう」が原因となって
体調不良を引き起こし、
脳の病気「うつ病」へと発展している可能性です。
どんなに薬で補助して正常な状態に戻しても、
その体調不良を起こしている原因が別な所にあると、
慢性化するという現象となって現れます。
『そんな心の病気なんて、治るわけがないじゃないか』
と思われるかもしれませんね。
結論から言うと、
実は心の病気って、習慣を変えれば治るんです。
ただ、ここで勘違いして欲しくないのは、
習慣を変える前に、
既に脳のバランスを崩してしまっている場合は、
薬が必要になるという事です。
だから、まずは薬を処方してもらって、
人為的にでもバランスを戻して下さいと
最初にお伝えしたのです。
心の病気が厄介な理由
とはいえ、冒頭の例でもご紹介したように
「心の病気」が厄介なのは、
誰もそれを認めたがらないということです。
とにかく、自力で何とかしようとする。
そして次に厄介なのが、病院に行って薬で治ってしまうと、
『喉元すぎれば……』で、そのバランスを崩した原因の可能性である
『心のありよう』から目を背けてしまう事です。
もし、うつ病になってしまった原因を
他人や社会に向けるような考え方を持っていたり、
折りに触れ、そういう事を口にする態度だとしたら、
要注意です。
それこそが、ここでお伝えしている『心のありよう』、
『世界の捉え方』と深く関係しているからです。
どうして慢性化するのか?
物の考え方が「他人を攻撃する」傾向にある場合、
その人は人に嫌われる事になります。
そうすると当然ながら、
その周りからネガティブな反応が返って来る事になり、
それが、ますます不快な状態になるという
悪循環に陥ってしまいます。
例えば、自分の立場がある程度 確保されている場合、
外に発散させる事で、
一時的にストレスが軽減されるかのように錯覚します。
ところが、その元になっている「不快感」は、
執拗に自分自身を攻撃し続けます。
このような『心のありよう』が、
脳の不調を慢性化させてしまう本当の理由です。
では、どのような『心のありよう』になれば、
このような慢性化を断ち切る事が出来るのでしょうか?
それには
『どうして「心の病気」が起こるのか?』
という事を考えなければいけません。
そして その前に
一般的に「心の病気」の原因と考えられている
「ストレス」についての誤解を解いておかなければ なりません。
周りくどいようですが、まず
「人間にはストレスが大切だ」
という事を理解して下さい。
ストレスも必要
ストレス回避が不可能な理由
よく「ストレスは良くない」と言われています。
それなら、ストレスになる原因が全て消え去ったら、
それが最高の状態だという事になります。
ところが最近の脳科学では、
一般的に『喜び』という感情も、
ストレスである事がわかって来ています。
ちょっと不思議に思うかもしれませんが
「過度に緊張する」という点で、
マイナスな感情もプラスの感情も、
脳的には「ストレス」なんです。
こうなると本当の意味で、
「ストレスと無縁な人生などないのだ」
と理解できると思います。
ストレスが守っているもの
でも見方を変えれば
『脳には適度なストレスが必要なのだ』
と考える事も出来ませんか?
脳は乳幼児の頃から、
外部刺激によって発達する事がわかって来ています。
別の見方をすると、
内部的に生産されるストレスという内部刺激によって、
その発達が維持されている、とも考えられるのです。
たとえば筋肉や骨は、宇宙飛行士達の実験から、
無重力であまり使わないでいると、
退化してしまう事が知られています。
それと同じで、脳もストレスがゼロになると、
今度はボケてしまうのです。
そのボケが続くと
「脳の病気」や「心の病気」に発展する可能性があります。
そうならないように私達は、
刺激が少ない時期に、怖い夢を見たりします。
専業主婦の人が「ドロドロの昼ドラ」を好んだりするのも、
脳に刺激を与えようとしているのかもしれません。
つまり「適度なストレス」は、
脳を健康な状態に保つ作用があるんです。
過度なストレスに対応する
脳の健康には、適度なストレスが必要な事がわかりました。
でも、もちろん過剰なストレスが、
心の病気を引き起こす事は、間違いありません。
昔の人の対応方法を知る
この過度なストレスに対応するには、
まだ良い薬がなかった時代の人達が、どのように
ストレスに対応していたのかが参考になります。
もしかすると、100年前より現代の方が、
ストレスが多いと思っている人が多いかもしれません。
でも、ちょっと考えてみて下さい。
大昔の農村の人びとの暮らしは、
天候や武士などに支配されていて
現代よりも、よほど酷いストレスに晒されていました。
でも、その頃の人たちが
「心が病んでいる人達が多かった」
という話は聞いた事がありませんよね。
不思議ではありませんか?
現代よりもストレスが多かった時代に、
心の病気の人が少なかったなんて……
宗教以外の信仰
それには、農村などに昔から伝わっている、
「日本の土着の宗教や太陽信仰」が
関係していたと思われます。
司馬遼太郎の歴史小説「坂の上の雲」の中に、
名参謀で知られた児玉源太郎が、中国の兵舎で、
早朝に太陽に拝んでいたというエピソードが出てきます。
毎朝、太陽に向かって
「ありがたや」と拝んでいたんです。
恐らく、それくらい浸透していたのでしょう。
宗教というよりは、風習に近いものだと思います。
現代人は太陽の恩恵なんて あまり考えませんが、
自然の中で生きる人にとって太陽は
「最高の恵み」でした。
太陽があるから生きていられるんだ、
という感謝の気持ちを、
毎朝感じていたのだと思います。
これは、ほんの一例です。
かつて農村には、神社や仏閣という特別な信仰の他に、
家の中の囲炉裏や便所、
いろんな場所に神様がいるという意識があって、
「ありがたい」と感謝していました。
まさに感謝の対象が八百万(やおろず)、
ほぼ無限にあったという事です。
この身の周りのあらゆる環境に感謝する習慣こそが、
現代よりもストレスが多かった時代に、
それほど心が病気になる人が少なかった理由だと思います。
逆に言うと、日本では歴史上、
現代ほど感謝する機会が減っている時代も
無いのではないでしょうか。
「感謝」の効果
では、どうして「感謝する気持ち」がなくなると
「心の病気」に発展するのでしょうか?
それは感謝の気持ちが、脳の健康を作るからです。
脳の健康には、ドーパミンという脳内ホルモンが
大きく関わっている事が知られています。
病院で処方される薬は、
このドーパミンの分泌を補助するものです。
ドーパミンは「生きる意欲を作るホルモン」
ともいわれていて、
活発に生活するのに欠かせません。
ドーパミンが出ると、
脳は幸せを感じるようになっているからです。
つまり、幸せを科学的に表現すると、
「脳内にドーパミンが出ている状態」
と言えるのです。
そして このドーパミンは、薬に頼らなくても、
「いろんな事に感謝する」事で
分泌される事がわかっています。
これって、すごい事だと思いませんか?
身体に例えると、最近ビタミンが足りてないから、
「体内で自己生成するか」
みたいな事が出来てしまうという事です。
つまり感謝する機会が多ければ、脳を健康に保てるので、
幸せを感じる時間も増えるという事になります。
逆に言うと、何にも感謝できない人……
つまり何でも出来て当たり前、あって当たり前
という考え方をしている人は、
脳内でドーパミンが分泌される事はありません。
不幸を感じている時間が長くなり、
ストレスに対応できない状態が続く・・・
という事でもあります。
「現代版」ストレス対応法
さきほど適度なストレスが必要だという話をしました。
それと共に過度なストレスが体調不良を起こし、
心の病気にもなり易い事を説明しました。
そして、過度なストレスにならない為の方法が、
感謝する機会を増やすという事なのです。
ところで、昔の日本では当たり前だった
あらゆる事に感謝する、太陽にさえ感謝するような
信仰を失ってしまった現代人は、
どうすれば良いのでしょうか?
それには、考え方を変える必要があります。
フォーカスする対象を変える、という言い方もできます。
ストレスを利用する
ストレスの原因は、100年前に比べたら減ったかもしれませんが、
今でも決して無くなったわけではありませんよね。
だったら、この『ストレスの原因を利用する』
というのは、どうでしょうか?
具体的には、例えば上司に
とても嫌なヤツがいたとします。
そのとき普通なら、
上司の事ばかりにフォーカスしてしまう筈です。
最初は『指導の内容がおかしい』から始まり、
だんだん顔が気に入らない、声が気に入らないと、
どんどんエスカレートしてしまうのが常ですよね。
そこで、フッとフォーカスをずらしてみて下さい。
上司以外の仕事仲間に、目を向けるようにするんです。
すると『他の人たちは、良い人だなあ~』
という事に気づくはずです。
そしたら、すかさず感謝して下さい。
一人、一人に対してです。
これが八百万(やおろず)感謝方式です。
そして、さらに一歩進んで、
この仲間たちの良さに気づかせてくれた、
嫌な上司にも感謝して下さい。
これで八百万(やおろず)感謝方式の完成です。
「感謝」発動装置
こんな風に
ストレスになる要因を逆手にとって、
「感謝発動装置」に転化してしまうんです。
「私だって、誰かに得になる事をしてもらったら感謝している」
という人がいるかもしれません。
よく考えればわかりますが、
「誰かが何か感謝に値する事をしてくれたら、感謝する」
という考え方を持っている限り、
なかなか感謝する機会など巡って来ない事がわかると思います(^^;
本当なら、一日に何回も感謝した方が良いのです。
ところが現実は、感謝に値するような事なんて
起こるのは少ないのが普通です。
これでは、完全に人生に対して
「受け身」になってしまいます。
とはいえ、常に『ありとあらゆる事に感謝する』
なんて事が出来れば良いですが、
それでは机上の空論になりかねません。
ところが、日に何度かストレスに感じる事なら、
何回かあると思います。
闇があって、はじめて光が認識出来るように、
ストレスになる要因があって、
はじめて感謝する対象が見つかるんです。
そして、その事に気づかせてくれた闇にも感謝できた時、
あなたは「幸せな考え方」の達人になっていることでしょう。
こういう「物の考え方」があると知っただけでも、
効果があります。
実際に出来るようになるには、
ある程度の練習時間が必要になります。
最初は「そう言えば、ああいう考え方があったなあ……」
と思い出すだけで十分だと思います。
まとめ
私たちの先祖は、他人を蹴落として、
自然淘汰の中で生き残ってきた種族です。
だからこそ、
長きに渡って生存できているとも言えます。
だから、人を押しのけてでも生きようとする、
「憎しみや敵意」が多いというのは、
私たちの種族の本能です。
だからこそ、何もせずに放っておいたら、
憎しみや敵意に飲まれてしまいます。
そうなると、最初は軽微なストレスだったのが、
どんどん溜まって
過剰なストレスに変わっていきます。
我々が幸せになるには、訓練が必要なんです。
私たちの幸せを感じる才能の5割は、
実は先天的、つまりDNAで決まっている事がわかっています。
世の中には、生まれつき幸せを感じやすい人、
言い換えれば、ドーパミンが出やすい人がいるという事です。
では生まれつき出にくい人は、どうすれば良いのか?
その答えの一つが「瞑想」である事がわかっています。
宗教などは、この代わりをしていたとも言えるのです。
機会があったら、この瞑想法についても、
ご紹介したいと思いますので、ご期待下さい。